著者:吉澤和子(Kazuko Yoshizawa, Sc.D.)
栄養疫学者/グローバル・ヘルス・ニュートリションスペシャリスト
元 ハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)客員サイエンティスト
プロフィール
本記事の位置づけと研究背景
本記事は、食物摂取頻度調査票(FFQ)の妥当性検証に関する研究について、 著者が国際学会で行った発表内容を記録・整理したものです。 栄養疫学研究において不可欠な「食事調査データの信頼性」を、 方法論の観点から解説します。
栄養と生活習慣病の関係を検討する研究には、大規模追跡調査に基づく疾病情報と栄養情報が不可欠です。 栄養情報の収集方法としては、食物摂取頻度調査票(Food Frequency Questionnaire:FFQ)が広く利用されています。 著者らは2014年に、日本で使用するFFQを開発しました。 FFQの妥当性検証研究は、栄養疫学研究における最も重要な基礎的要素の一つです。 本研究では、妥当性評価の統計解析に、ハーバード大学で開発された方法論を用いています。
栄養と生活習慣病の関係:大規模追跡調査とFFQの重要性
現代の公衆衛生において、栄養と生活習慣病(心血管疾患、糖尿病、肥満など)との関係を明らかにすることは、 健康促進や疾病予防に不可欠です。 これらの疾患は、食事や生活習慣と密接に関連しており、 その関連性を科学的に検証するためには、大規模な追跡調査が必要となります。 追跡調査では、対象者の長期的な健康データと栄養データを収集し、 疾病発症リスクや進行との関連を統計的に分析します。
食物摂取頻度調査票(FFQ)の役割
栄養情報の収集にはさまざまな手法がありますが、 その中でも食物摂取頻度調査票(FFQ)は、大規模疫学研究において広く用いられている方法です。 FFQは、一定期間内にどの程度の頻度で特定の食品を摂取したかを把握するための調査票であり、 個人の食事パターンを長期的に評価する目的で用いられます。 食事と生活習慣病の関係を検討する上では、 正確で信頼性の高い栄養データの確保が不可欠です。
2014年、著者らは日本における生活習慣病リスクの検証を目的としたFFQを開発しました。 本FFQは、日本の食文化や食品構成の特性を反映しつつ、 国際的に用いられてきた栄養疫学研究の基準に基づいて設計されています。
ハーバード大学で開発されたFFQ妥当性検証の方法論
FFQによって収集された栄養データの妥当性を評価するためには、 精密な統計解析が求められます。 著者らは、ハーバード大学で開発されたFFQ妥当性検証の方法論に基づく統計解析を行っています。 この方法論は、食事記録法や24時間食事思い出し法などの標準的な食事評価手法との比較を通じて、 FFQによる推定値の信頼性を検証することを目的としています。
2020年の中間報告とYouTubeでの発表
本研究の中間報告として、著者らはOnline Summit on Cardiology-2020において、 栄養と生活習慣病リスクとの関連に関するプレゼンテーションを行いました。 本国際学会では、心血管疾患を中心に、世界各国の研究者による最新の研究成果が共有されました。
当該発表は、 “Dr. Yoshizawa, Kazuko, Harvard T.H. Chan School of Public Health | Online Summit on Cardiology-2020” のタイトルでYouTube上に公開されています。 研究の背景、解析手法、ならびにFFQ妥当性評価の考え方について解説しています。
今後の展望
今後は、さらなるデータの蓄積と解析精度の向上を通じて、 日本における栄養と生活習慣病の関係性をより明確に解明していく予定です。 食事評価手法の信頼性向上は、 健康増進政策や医療ガイドラインの科学的根拠の強化にもつながると期待されます。
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コメント
方法論について詳しくしりたいです。