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【国連SDGs】「5歳未満のこども」の生存率と母親のリタラシー

なぜ「5歳未満のこども」なのか?

「5歳未満のこども」は国連の社会・経済開発資料の中でよくみかける用語である。開発分野では「5歳未満のこども」の栄養不良率は開発指標として使用されることが多いが、開発の進捗状況や評価に敏感であるのがその理由である。

国連は開発プロジェクトの成果を、5歳未満のこどもの栄養不良率で評価することが多い。いくら国のGDPが高価くとも、この指数が高い場合は、この国の社会の有り様は良いとは言えない。こういった社会では、貧富の差、教育、セーフティーネットなどが無かったり機能していないことが多いからである。

社会階層別に見て、栄養不良にかかり易いリスク・グループ( 脆弱グループともいわれる)は、こども、妊産婦、授乳婦、高齢者がこれに該当するが、これらのハイリスク・グループの中でも、5歳未満のこどもの栄養不良率は、長期的な社会・経済開発に反映する指標として国連の開発プログラムの評価に用いられている。

国連の栄養不良率

国連の統計によると世界の8億2000万人が栄養不足の状態にあり、その中でも「5歳未満のこども」の22%が慢性の栄養不良に陥っている。重度の栄養不良はこどもの死につながる。栄養不良の問題は、全体では改善されたと言われているが、改善されていない国や地域がある。

国連が出版する世界地図に示した高い貧困率の分布は、栄養不良率の分布と重なっていることが判る。根底にある問題が、貧困であることを意味している。

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「栄養不良と規定要因概念モデル」について

高い栄養不良率を下げるための効果的な介入方法について、国連は多くの研究を行ってきた。国連が介入することで、効果がある要因について多くのことが分かっている。多くの研究や調査をもとに、1980年後半、国連(主にUNICEF) は「栄養不良と規定要因概念モデル」を策定し、栄養改善のための介入プログラムの根拠として用いてきた。このモデルでは、多くの視点からの介入すべき要因が提示されている。

このモデルでは、栄養不良が、ただ単に生物学的な原因だけで引き起こされるのではなく、政治・社会・経済開発の欠陥や文化的背景が原因となって引き起こされることを説明している。小手先の解決方法では問題は解決しないということでもあるが、現場では目の前の問題を解決しなければならない。そのため問題によって、短期的または長期的な方法を使用するかを選択しなければならない。

国連児童基金(UNICEF)、世界保健機関(WHO)、国連食糧農業機関(FAO)は、5歳未満のこどもの栄養改善を目的とした介入プログラムを策定する時、根拠としてこのモデルを参考にしている。時代に合わせて、この20~30年のあいだで変化してきた。しかし、考え方は大きく変わっていない。

母親のリタラシーと子供の生存率

5歳未満のこどもの栄養不良率を改善するために、ワクチン接種率の向上や離乳食のノウハウを普及するために、加盟国の保健省を支援している。

このモデルでは、栄養不良の予防において、長期には母親の教育(字が読めること)が重要な鍵であることを示唆している。こどもは、ひとりでは育つのではなく母親のケアが必要である。このため、母親の字が読めること(リタラシー)は重要な意味を持つ。

ワクチン接種率と離乳食の向上

感染症は、こどもの栄養不良につながる大きなリスクである。栄養状態が悪いとは、感染リスクが高まり、栄養不良リスクを押し上げる。多くの感染症は、ワクチンで予防可能である。ワクチンは非常に費用対効果の高い予防方法である。

ワクチン接種率と離乳食の向上には、母親のリタラシーが必須である。そのために国連は母親の識字教育にも力をいれている。母親が字を読めれば、予防接種の重要性を理解し、こどもを感染症から守るために、多忙な日常生活のなかでも、予防接種を受けさせることに努力するかもしれない。

生存率と離乳食

離乳食の正しいやり方は子供の感染症や下痢を予防することができる。UNICEFの「世界子供白書2019」は、生後6カ月前後で乳児が離乳食に移行する中で、適切な食べ物が与えられていないことが多いと指摘している。これはこどもの重度の栄養不良は死につながる。母親の離乳食の知識があれば、適切なケアにつながる。

ジェンダーと社会

母親がこどもへのケアに時間とエネルギーを割くことができる条件の1 つに、社会や家族の配慮が必要である。これが不充分なのは、社会、夫を含む家族の教育レベルの低さが関係していると言われている。こういった欠点に対応するためにジェンダー教育が必要になってくる。

ヘルス・サービスへのアクセスを支援する

子供の栄養不良率の軽減のためにはヘルス・サービスへのアクセスへの有無が大きな要因である。僻地に住んでいるため利用出来ないことはよくある。しかし地理的には問題がなく、アクセス手段があるにも拘わらずサービスを受けられないことがある。しかしこのような状況下でも、母親のリタラシーがこどもの生存につながり易い。僻地における地理的な医療へのアクセスを解決するには、別の方法が必要である。

まとめ

高い栄養不良率を下げるための効果的な介入方法について、国連は多くの研究を行ってきた。国連が介入することで、効果がある要因について多くのことが分かっている。多くの研究や調査をもとに、1980年後半、国連(主にUNICEF) は「栄養不良と規定要因概念モデル」を策定し、栄養改善のための介入プログラムの根拠として用いてきた。UNICEFが母親の識字教育にも力をいれてきたのは、このような背景があるからである。

参考資料

UNICEF, The State of the World’s Children, 2019
Kazuko Yoshizawa “Research on Poverty Assessment Methods and Indicators Focusing on the Nutrition” JICA, 2000 (in Japanese)

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