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【SDGs】社会経済開発と栄養

社会経済開発と栄養改善

国連の社会・経済開発の進捗状況や達成度を測るものさしとして栄養指標が用いられている。例えば、SDGsのいくつかのゴールの達成率を測るのにも慢性栄養不良率が用いられている。社会・経済開発を測る栄養指数の妥当性については、過去多くの研究が行われてきており、現在ではスタンダードなものとして使用されている。「5歳未満のこども」の栄養状態を表すものとして、体位計測値が用いられる。

1980年代、世界銀行の経済学者PerPinstrup-Andersenは社会・経済開発戦略について意思決定に使用できる指標を模索し、栄養指標が信頼性のある指標であることを示した。ノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・センは、こどもの栄養不良率を比較して男女差があることを示し、社会制度が栄養不良率の差に関係していることを明らかにした。センの研究は、その後のジェンダーの取り組みを加速した。社会・経済開発を行って、こどもの栄養状態に改善がみられなければ、その開発は成功しているとは言えないのである。

【国連SDGs】「5歳未満のこども」の生存率と母親のリタラシー
社会階層別に見て、栄養不良にかかり易いリスク・グループ( 脆弱グループ)は、こども、妊産婦、授乳婦、高齢者がこれに該当する。その中でも、5歳未満のこどもの栄養不良率は、社会・経済開発に敏感な指標である。発展途上国では栄養不良は死に直結する。

戦略としての栄養サーベイランス

多くの国連の加盟国で栄養サーベイランスが行われている。この栄養サーベイランスの定義は、ある集団の栄養状態について監視し、栄養改善につなげるためのものであり、介入のための出発点である。栄養サーベイランスの活動としては、データの収集、比較、解析、情報共有などがある。栄養サーベイランスの基本的な考え方は、疾病サーベイランスと類似しており、感染症サーベイランスに組み込まれることがある。この栄養サーベイランスでも、こどもの栄養指標として体位計測値が使用されている。

戦略としてはWHOやUNICEFが推進する”6ヶ月完全母乳”がある。https://libreriahealth.com/sgdsbreastfeeding/

国連の栄養サーベイランスの目的

WHO及びUNICEFなどの国際機関が行う栄養サーベイランスには、主に3つの目的がある。①長期的栄養モニター (Long-term nutrition monitoring) 、②プログラムのインパクト評価 (Evaluation of program impact) 及び③緊急時の介入 (Timely warning and intervention systems) に備えるためのものである。緊急時の介入、食糧不足などに対応するために、潜在的な問題を予測し、食糧不足などの問題が深刻になる前に、短期間で実現可能な行動をいちはやく対応するための情報である。

フィールドで使える栄養アセスメント

体位計測(anthropometry)は年齢、性別、身長、体重によって個人や集団の栄養状態を計測することである。WHO、UNICEF、FAOなどの機関による栄養アセスメントでは体位計測がしばしば使われている。栄養評価のためにこの方法を利用する理由として、コストが低くて済む、フィールド・スタッフの研修期間が短かくて済む、高いレベルの精度が得られる、使用される計測器を持ち運ぶのに便利である、過去と現在の栄養状態を知ることができる、といったことが挙げられる。

緊急時支援と体位計測

緊急時、例えば、飢饉や難民キャンプでは、最もリスクの高い個人を選ぶ出すために、迅速で簡易な方法をとらなければならないため、取り組む対象は急性栄養不良(wasting)である。指標は、急性栄養不良を表す身長別体重(low weight-for-length)を使用する。上腕囲計測も迅速に行える。開発途上国で、栄養サーベイランスのような栄養アセスメントに求められていることは、旱魃などのような場合に迅速に対応できることである。その為、政策についての意思決定には既に存在しているデータを利用することも含めて、効率的にデータを収集するための方法がとられている。非常事態には誰がリスクにあるかを知ることの方が、何故そうなのかを知ることより優先される。

UN Data: 国連データへのアクセス

国連では貧困や栄養など多岐にわたってデータを開示している。以下にリンクを貼っておく。


国連データへのアクセス

 

著者 吉澤和子のプロフィール

Kazuko Yoshizawa Academic Profile

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