Since May 2020

栄養とSDGs: 社会経済開発における役割

著者 吉澤和子 プロフィール

はじめに

本記事では健康と経済の密接な相互関係に焦点を当て、特に社会経済開発と栄養改善の関連性について解説します。現代社会において、持続可能な発展を達成するためには、経済的な成長だけでなく、人々の健康と栄養も重要な要素として考慮されています。社会経済開発は、貧困削減、教育の普及、雇用の創出など、国や地域の繁栄を推進するための取り組みを指し、一方で栄養改善は健康的な生活と持続可能な発展の土台を築く役割を果たします。この記事では、両者がどのように補完し合い、国際機関のアプローチとフィールドでの栄養アセスメントが持続可能な未来を実現するためにどのように貢献しているかを探求します。

健康と豊かさの均衡:社会経済開発と栄養改善

社会経済開発と栄養改善は密接に関連しており、持続可能な発展を追求する上で重要な側面です。社会経済開発は、国や地域の経済的な繁栄と社会的な進歩を促進するための取り組みであり、これには貧困削減、教育の普及、健康ケアの提供、雇用機会の創出などが含まれます。しかし、経済的な成長だけではなく、人々の健康と栄養も同様に重要です。栄養改善は、十分な栄養を得ることができない人々やコミュニティに対する包括的な支援を提供し、持続可能な社会経済的な進歩の基盤を築くのに貢献します。

国連は、栄養改善は特に若い世代や未来のリーダーである子供たちに焦点を当てています。5歳未満の子供たちの適切な栄養状態を確保することは、将来の人材の健康的な発達と能力の向上に不可欠です。子供たちが十分な栄養を受け取ることで、学習能力が向上し、健康な生活を送る基盤が整います。その結果、社会経済的な発展においてもポジティブな影響が生まれ、国や地域全体の持続可能な成長が実現します。社会経済開発と栄養改善は、相互に補完し合い、持続可能な未来を築くために協力していくべき不可欠な側面です。

栄養改善と持続可能な開発目標(SDGs):国際機関のアプローチ

国連などの国際機関は、社会・経済開発の進捗状況や達成度を評価するために、栄養指標を使用しています。特に、SDGs(持続可能な開発目標)の一部のゴールの達成率を測定する際には、慢性栄養不良率などの栄養指標が頻繁に活用されています。これは、栄養状態が社会経済開発の質や社会制度の健全性に大きな影響を与えるためです。栄養改善がなければ、持続可能な発展は難しいと言えます。

また、特に「5歳未満のこども」の栄養状態は重要な要因となっており、体位計測値などの栄養指標がその評価に使用されています。子どもの栄養状態が改善されない場合、将来の社会経済的な健全性に悪影響を及ぼす可能性が高いため、栄養改善は優先事項とされています。このように、社会経済開発と栄養改善は相互に補完し合い、持続可能な未来を築くために不可欠な要素となっています。

戦略としての栄養サーベイランス

戦略としての栄養サーベイランスは、多くの国連加盟国で実施されており、これは栄養状態の監視を通じて栄養改善につなげるための重要な手法です。栄養サーベイランスの活動は、データ収集、比較、解析、情報共有などを含み、集団の栄養状態を定期的に監視し、介入計画の出発点として機能します。このアプローチは、疾病サーベイランスと類似しており、感染症サーベイランスの一環としても採用されることがあります。国連の栄養サーベイランスでは、特に子供の栄養状態を評価するために体位計測値が使用されています。

国際機関、例えばWHOやUNICEFなどが実施する栄養サーベイランスには、主に3つの目的があります。第一に、長期的な栄養モニタリングを通じて栄養状態の変化を追跡し、政策の評価に利用します。第二に、プログラムの効果を評価し、栄養改善プログラムの成果を測定します。そして第三に、緊急時の介入をサポートするために、潜在的な危機を事前に警告し、迅速な対策を講じる情報を提供します。これにより、栄養サーベイランスは、栄養状態の向上と持続可能な発展の促進に不可欠なツールとして活用されています。

フィールドで使える栄養アセスメント

栄養アセスメントは、現場やフィールドで迅速かつ効果的に実施できるため、栄養状態を評価するための非常に重要な方法です。特に、開発途上国や緊急時の状況において、迅速かつ正確な情報が必要とされることがあります。以下は、フィールドで使える栄養アセスメントに関する詳細です。

  • 体位計測(Anthropometry): 体位計測は、栄養状態を評価するために広く使用されている方法です。この方法では、対象者の年齢、性別、身長、体重などの要因を測定し、それに基づいて栄養状態を評価します。具体的な指標には、身長と体重の比率である身長別体重(Height-for-Weight)や、上腕囲計測などが含まれます。これらの指標は、栄養不良の程度を示すために使用され、急性栄養不良(Wasting)の早期検出にも役立ちます。
  • 国際機関のガイドライン: 世界保健機関(WHO)、国際連合児童基金(UNICEF)、国連食糧農業機関(FAO)などの国際機関は、栄養アセスメントのためのガイドラインとプロトコルを提供しています。これらのガイドラインは、フィールドでの栄養評価の方法を標準化し、正確性と比較可能性を確保するのに役立ちます。
  • 利点: フィールドで使える栄養アセスメントの主な利点は次の通りです。
    • コストが低い: 特別な機器や設備が不要で、比較的低コストで実施可能です。
    • 短い研修期間: フィールドスタッフの研修期間が短いため、即座に活動を開始できます。
    • 高い精度: 適切なトレーニングを受けたスタッフが実施すれば、高い精度の結果が得られます。
    • 移動が容易: 必要な計測器や道具はコンパクトで持ち運びが容易です。
    • 過去と現在の比較: 過去のデータと比較することで、栄養状態の変化を追跡できます。
  • 緊急時支援: 緊急時、たとえば飢饉や難民キャンプでは、栄養アセスメントが急速かつ迅速に行われる必要があります。急性栄養不良の早期発見が生命を救う役割を果たし、指標として身長別体重などが使用されます。
  • 効率的なデータ収集: 開発途上国などでの栄養サーベイランスでは、データ収集の効率性が重要です。非常事態において、誰がリスクにさらされているかを素早く把握することは、効果的な政策決定に不可欠です。

栄養アセスメントは、栄養改善プログラムや緊急時支援の計画において、具体的な行動を指針とするための貴重なツールです。フィールドでの効果的な栄養アセスメントは、栄養状態の改善と人々の生活の質の向上に向けた重要な一歩です。

体位計測(Anthropometry)と指標

栄養状態を評価するために広く使用されている方法です。この方法では、対象者の年齢、性別、身長、体重などの要因を測定し、それに基づいて栄養状態を評価します。具体的な指標には、身長と体重の比率である身長別体重(Height-for-Weight)や、上腕囲計測などが含まれます。身長別体重は、身長と体重の比較によって計算され、通常の栄養状態からの逸脱を示します。この指標は、身長に対する体重が過度に低い場合、栄養不良や急性栄養不良(Wasting)の兆候を示すために使用されます。急性栄養不良は、体重が身長に対して極端に低く、体脂肪が不足している状態を指し、早期検出と介入が必要な場合があります。したがって、体位計測は栄養状態の評価と、栄養改善プログラムの計画と実施において重要なツールとなっています。

飢饉や難民キャンプでの栄養緊急事態への対応策

緊急時、たとえば飢饉や難民キャンプのような状況では、最もリスクの高い個人を選び出すために、速やかで簡便な方法が必要とされます。そのため、焦点を当てるべき対象は急性栄養不良(wasting)です。この際、急性栄養不良を示す指標として、身長に対する体重の比率である身長別体重(low weight-for-length)が使用されます。また、上腕囲計測も迅速に実施可能です。特に開発途上国において、栄養アセスメントのような情報収集手法は、旱魃などの緊急事態に迅速に対応できることが求められます。そのため、政策決定に必要なデータを効率的に収集するための方法が採用され、非常事態では誰がリスクにさらされているかを知ることが、その原因を詳しく解明することよりも優先されます。

まとめ

この記事は、健康と経済の密接な相互関係に焦点を当て、特に社会経済開発と栄養改善の関連性を説明しています。現代社会において、持続可能な発展を達成するためには、経済的な成長だけでなく、人々の健康と栄養も重要です。社会経済開発は、国や地域の繁栄を推進するための取り組みを指し、一方で栄養改善は健康的な生活と持続可能な発展の土台を築きます。さらに、栄養改善は特に若い世代や子供たちに焦点を当てており、彼らの適切な栄養状態が将来の社会経済的な健全性に影響を与えます。国際機関は栄養指標を使用して社会・経済開発の進捗を評価し、栄養改善が持続可能な未来を実現するために不可欠であることを強調しています。また、フィールドでの栄養アセスメントは急性栄養不良の早期発見と非常時支援に不可欠であり、特に身長別体重と上腕囲計測が迅速かつ効果的な方法として活用されています。

関連記事 「5歳未満のこども」の生存率と母親の識字率

    コメント