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【未知の感染症】COVID-19この1年

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【未知の感染症】COVID-19この1年

Evidence

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世界保健機関(WHO)が、新型新コロナウイルス(COVID-19)パンデミックに対して緊急事態宣言(2020年1月30日)を採択してから11ヶ月が経った。感染の猛威は第2波を経て第3波へと続いているが、ワクチン普及が終了するまで脅威はしばらくつづくと思われる。そんな中、数日前に電子版ニューヨーク・タイムズから「A shot of hope」という記事が送られてきた。日本語で、希望のワクチン、と言う意味だと思うが、ワクチンへの期待を感じさせる記事のタイトルである。WHOの緊急事態宣言があってから今日まで、COVID-19についての情報は多岐に亘っている。この記事では、気になったトピックについて触れたい。

Photo: reno-laithienne–ivUqmSSJrw-unsplash

【ワクチン接種と倫理】ワクチン接種優先順位の倫理

Photo:pexels-nataliya-vaitkevich-5863316

イギリスや米国で、医療従事者へのワクチン接種が開始された。ワクチンの治験も始まっていなかったと思うが、ハーバード公衆衛生大学院が毎週開催するCOVID-19をテーマにしたオンライン・フォーラムで、ワクチン接種を受ける優先順位について議論されたことがあった。当然、倫理的な面から議論されたのであるが。。。この感染症と戦う医療の最前線にいる医療従事者、高齢者や基礎疾患のある人など死亡リスクが高い人の優先順位が高いの当然のことであるが、これからの展開については、国、地域、人種など今まで議論されていないことが多く残されており、今後、課題が顕在化するだろうと感じた。日本と米国の社会的背景の大きな違いのひとつは、人種や文化の多様性の違いであるが、米国における公衆衛生政策の研究分野が多岐に亘っていることにも合点がいく。

COVID-19 を知るための指標【新規陽性者・重症社数・致死率】

東京都や政府が発表するCOVID-19の統計情報について、この感染症が流行り始めた頃と今を比較すると、行政が発表で注目する指標が変化していることに気づく。2020年12月17日現在では、新規陽性者数、重症者数、死亡者数の情報が飛び交っている。これから、明らかに医療崩壊を懸念していることがわかる。COVID-19が流行りはじめのころは、視点が異なっていた。感染力が未知であったために、致死率という指標が注目されていた。治療方法が改善されたこともあり、最近では余り聞かなくなった。といっても、サーベイランスを行っている所には、いろいろなデータがあるはずである。行政が発表する情報から受ける印象は、重症者を収容できる医療施設のキャパシティが何とか持ちこたえられるように必死であることが伝わってくる。それにしても、日本の感染症パンデミックに対してのインフラが、こんなにも脆弱であったことに気付かされる。

因みに感染症の高い致死率については、2014年に問題となった西アフリカのエボラ出血熱がある。この感染症のパンデミックが問題になったとき、致死率がアメリカ疾病予防管理センターは57-90%と報告していたことがあった。その後、治療方法などの改善により、致死率は大きく下がったことが報告された。

【マスク着用の効果】COVID-19と介入方法

介入にはいくつかの種類がある。介入は一般の市民が実行しやすく効果がなければならない。しかし、COVID-19 は未知の感染症なので、蓄積されたエビデンスはない。過去の他の感染症対策から得られた方法を応用するしかない。ソーシャル・ディスタンスシング(社会的距離をとること)、手洗い、マスク着用は、世界中で導入されている。これらの方法は、多くの日本でも受け入れられている。日本人にとって、ソーシャル・ディスタンスシングは余り馴染みがなかったが、COVID-19が飛沫感染をするということが知られていたので、すんなり受け入れられた。効果がない場合は、次の段階の介入が考えられた。例えば、都市のロックダウン。ニューヨーク市はロックダウンを行ったが、ロックダウンは経済を疲弊させ失業者を多く生み出したため、その後、様子を見ながら試行錯誤で行われている。

米国におけるマスク着用については、この感染症が流行りはじめのころは抵抗があった。というのは、マスクを着用している人は重篤な感染症にかかっていると誤解されるためである。しかし今では状況が変わり、スーパー入店時にはマスク着用が条件になっている。マスク着用の効果については、数ヶ月前までWHOは予防するエビデンスはないと言っていた。また、私の周りのボストンの公衆衛生の専門家たちの間でも、マスクの着用には疑問を持っていた。ところが、今ではマスクは必須の予防方法になっている。

介入は測ることができる【因果関係を知るためのデータ】

Photo:https://pixabay.com/users/mwewering-185784/

介入の効果を測ることは可能である。方法は、因果関係評価を目的に集めたデータがあれば統計学的にを測ることができる。統計モデルでは、COVID-19の場合、アウトカム(独立変数)は感染者数である。要因(独立変数)は、ソーシャル・ディスタンスシング、手洗い、マスク着用など。さらに、仮説により独立変数に重要と考えられる要因を加えることができまる。米国社会の場合は、多民族国家が抱えている問題として、人種による医療へのアクセスへの格差など評価も必要になってくるであろう。

WHOの感染症サーベイランスと役割

多くの場面で、エビデンスが無いのに目の前にある問題を解決しなければならないことがある。今回のCOVID-19の場合がそうである。未知の感染症なので、公衆衛生政策の責任者は、対策を講じるために試行錯誤で行っているのが現状である。そういう状況では、正確な情報は必須である。このため加盟国はWHOに期待をしていたのは当然である。

WHOは、いままで長期にわたり世界の感染症を監視する目的で、多くの加盟国で感染症サーベイランスを行ってきた。そのために、WHOは加盟国に技術移転を行い、多くの地域と国からデータを収集し世界に発信する役割がを担ってきた。もし何かあれば、その情報を加盟国と共有し問題に取り組んできた。当然そういったデータは、信頼できる情報でなければならない。ところが、中国で新型コロナ感染症のアウトブレイクが報道されはじめたころ、WHOの情報の信頼性について指摘する声があった。もし、WHOが正しい情報を発信していたのならば世界の状況はもっと違っていただろう、という内容の批判もあった。2020年5月に開催されたWHO総会では、WHOの責任も議題のひとつになった。今後、検証されていくと思う。

グローバル社会での正確な情報の共有の大切さ

感染力の強い感染症、例えばエボラ出血熱など、アウトブレイクやパンデミックは、かつては一部の国や地域にかぎられていたが、クローバル化が進む現代においては、どの国も感染症のリスクに曝されている。COVID-19に限らず、私たちはエビデンスが無いにもかかわらず、直面する問題を解決しなければならないことがある。WHOのCOVID-19緊急事態宣言から約1年を振り返ると、未知の感染症に対して人類は余りにも無防備であること、グローバル化が進む現在において、正しい情報の共有がいかに大切であるかを再認識した。

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