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国連の完全母乳育児推進:SDGsの戦略‐乳幼児の生存率向上の鍵

Photo by Jamie Street

はじめに

母乳育児の取り組みは課題があるあるが、それは未だにSDGsにおいて重要な役割があると考える。2012年の世界保健総会の決議にもかかわらず、十分な成果を上げていないと言わざるをえない。しかし、完全母乳育児の割合が目標に達していない現状を認識しながらも、乳幼児の健康や免疫、長期的な幸福において母乳育児の重要性を理解することが不可欠である。母乳育児を促進し支援する取り組みは継続されるべきであり、普及が進まない理由に対処する必要があある。母乳育児への取り組みを続けることで、グローバルな健康の向上や栄養、乳幼児の生存率、総合的な幸福に関連するSDGsの達成に貢献できると考える。この記事では、WHO/UNICEFの母乳育児ポリシーペーパーについて基本的なことをことに触れておきたいと思う。

国連の母乳育児のポリシーペーパー

世界保健総会が開催され母体、乳幼児の栄養に関する包括的実施計画が策定され決議65.6として承認されたのは2012年である。決議の内容は、2025年までに達成するというないようのもので6つのグローバル栄養目標を定めているが、5番目の目標は、生後6か月間赤ちゃんは母乳だけで育て、この割合を少なくとも50%まで増やすというものであった。

完全母乳育児はこどもの生存率を高める

赤ちゃんが生まれてから6か月まで母乳だけを与えて育てることを「6か月完全母乳育児方法」と言う。これは、他の食べ物や水を一切与えずに、母乳だけを飲むことであるが。この方法は、感染予防策の中でも赤ちゃんの生存率をもっとも高める方法である。また、生まれてから1時間以内に母乳(初乳)を与え、さらに2歳以上になるまで母乳を続けることで生存率が更に上がる。

6か月完全母乳育児方法は、赤ちゃんの成長や発育に大切な栄養を与えることは当然であるが、赤ちゃんの最初の免疫を高めるため呼吸器の感染症や下痢、他の感染症に罹りにくい。さらに、長期的には将来の肥満や他なの重要な病気を予防する効果を示すエビデンスがあります。

母乳育児運動、当時の進捗状況

しかし、まだまだ改善が必要で、生まれてから6か月までの赤ちゃんが母乳だけで育てることが普通になるためには、たくさんの課題が残っている。これは統計的な数字をみると明らかである。世界的なレベルでみると、6か月間の完全母乳育児は38%だけである。そのため、この数字を上げるためには、さらなる努力が必要である。

母乳育児の普及率を高めることは可能である

1985年から1995年までの10年間では、世界的レベルで完全母乳育児の割合は年平均2.4%ずつ増加した(14%から38%まで増加)。しかし、その後、ほとんどの地域で割合は減少した。ただし、1995年以降、25カ国は独占的な母乳育児の割合を20ポイント以上増やした。すでに50%以上の独占的な母乳育児を実施している国も、健康と経済的な利点のために改善を続けることが重要である。

生後6か月完全母乳育児の割合を少なくとも50%に増やすために優先するいくつかの項目が提案されている

最も効果的だと思われるのは「病院や保健施設での独占的な母乳育児を支援する能力を強化しベイビー・フレンドリー・ホスピタル・ニシアティヴBaby-friendly Hospital Initiative(BFHI)を健康システムに再活性化、拡大、制度化する」である。理由は、病院や保健施設は、出産後の初期の段階で母乳育児をサポートする重要な場所であり母乳育児に対する正しい情報と支援を提供することで、母親が自信を持って授乳を行えるようになると想定されやすいからである。

また、BFHIBは、世界保健機関(WHO)とユニセフによって推奨される取り組みであり、母乳育児の普及と支援を促進するための国際的な基準がある。このイニシアチブを健康システムに再活性化し、拡大、制度化することで、病院や保健施設での母乳育児支援の質と量を向上させることができると考えられるからである。他の項目も重要であるが、病院や保健施設での支援の強化は、初期段階から母乳育児を促進するために直接的な効果をもたらす可能性が高い。しかし、個々の地域や文化に応じて複数のアプローチが必要であることも認識しておく必要がある。

国際企業による人工栄養のマーケティングの影響

人工栄養の国際企業によるマーケティングについて影響も考えられているが、国際的な規範やガイドライン(例:国際母乳代用品販売促進規範)が存在し、人工栄養企業のマーケティング活動を規制する努力が行われている。これにより、健康情報の提供や適切な母乳育児の促進が支援されることが期待されている。

母乳育児の重要性を広め、適切な支援を提供するためには、公的な機関や保健関係者、非営利団体、国際機関などが協力し、正確でバランスの取れた情報を提供する取り組みを続ける必要がある。

まとめ

母乳育児は課題があるが、SDGsにおいて重要な役割がある。完全母乳育児の割合が目標に達していない現状を認識しながらも、乳幼児の健康や免疫、長期的な幸福において母乳育児の重要性を理解しなければならない。母乳育児を促進し支援する取り組みは継続されるべきであり、普及が進まない理由に対処し母乳育児への取り組みを続けることで、グローバルな健康の向上や栄養、乳幼児の生存率、総合的な幸福に関連するSDGsの達成に貢献できると考える。

 

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