2025年1月米国では新しい大統領が就任し、大統領令によってパリ協定から再び離脱することになりました。この大国の離脱は、世界の人々に大きなショックを与えました。その影響は多岐にわたると思われますが、ここでは特に重要な5つの項目について考えたいと思います。
アメリカの離脱がもたらす影響
温室効果ガス削減目標の遅れ
1つ目は、温室効果ガス削減目標の遅れです。アメリカの離脱により、グローバルな削減目標が達成困難になり、地球温暖化が加速するリスクが更に高まります。この問題については、IPCC(2023)の報告書でも、各国が協調して行動しなければ気温上昇を1.5°C以内に抑えることが難しいと指摘されています。
国際協力の弱体化
2つ目は、国際協力の弱体化です。アメリカが不参加になることで、他国の取り組みの足並みが乱れ、気候変動対策における国際的な連携が損なわれる恐れがあります。特に途上国への影響が大きく、環境エネルギー政策研究所(ISEP, 2023)は、こうした協力の停滞が再生可能エネルギー導入の遅れや脆弱性の増加を引き起こす可能性があると報告しています。
途上国への資金援助と技術支援の減少
3つ目は、途上国への資金援助と技術支援の減少です。アメリカが提供していた支援が停止したことで、途上国での再生可能エネルギー導入や適応策が停滞し、脆弱性が高まります。この点については、環境省(2023)の資料でも、先進国による支援が国際的な取り組みを推進する鍵であると強調されています。
環境規制の緩和による逆行
4つ目は、環境規制の緩和による逆行です。アメリカ国内で環境規制が緩和され、化石燃料の利用が促進されることで、国際的な気候変動対策に逆行する影響が懸念されています。これについては、「Global Warming of 1.5°C」でも、化石燃料削減が気候変動対策の中心であると記されています。
パリ協定の信頼性低下
5つ目は、パリ協定の信頼性低下です。アメリカという大国が離脱することで、協定の実効性や国際的な約束への信頼が損なわれ、他国の取り組み意欲が低下する可能性があります。この点についても、UNFCCC(2023)は、国際的な枠組みの信頼性が低下することで、全体の進展が停滞する危険性を指摘しています。
日本が取るべき行動
これらの中で、特に「国際協力の弱体化」と「パリ協定の信頼性低下」は、著者が優先すべき重要課題と考えています。アメリカはこれまで、温室効果ガス削減や技術革新においてリーダーシップを発揮し、多くの国々に資金援助や技術支援を提供してきました。しかし、アメリカの離脱により、国際的な連携の柱が崩れ、途上国を含む他国の取り組みに混乱を招いています。また、アメリカが参加しないことで、削減目標を緩和する負の連鎖が起こり得ます。
国際的リーダーシップの発揮
日本が取るべき道として、国際的なリーダーシップを発揮し、途上国への資金援助や技術支援を強化することが重要です。また、国内では石炭火力発電からの脱却を進め、省エネ技術の開発や再生可能エネルギーへの転換を加速させるべきです。日本政府は「エネルギー基本計画」において、2030年における再生可能エネルギーの比率を22~24%にすることを目標にしています。このような取り組みについては、環境エネルギー政策研究所(ISEP, 2023)の提言が参考になります。
国民の意識を高め、持続可能な行動を促進
さらに、教育や広報活動を通じて国民の意識を高め、日常生活やビジネスにおける持続可能な行動を促進する必要があります。これには、地方自治体や企業との連携が重要であり、地域レベルからの気候変動対策を進めることが求められます。日本がこのような取り組みを推進することで、国際的な信用を高めると同時に、未来世代に持続可能な社会を引き継ぐ責務を果たすことができると考えます。
まとめ
アメリカのパリ協定からの離脱が世界に与える影響、特に「国際協力の弱体化」と「パリ協定の信頼性低下」が深刻な問題であり、日本がこれらの課題に対して積極的な国際的リーダーシップを発揮し、途上国への支援を強化すること、また国内での再生可能エネルギーへの転換や省エネ技術の開発を加速する必要があるということです。さらに、国民の意識を高め、持続可能な行動を促進することで、日本は国際的な信用を高め、未来世代に持続可能な社会を引き継ぐ責務を果たすことができるという結論に至ります。
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